2025-01-17
不動産を担保にして金融機関から融資を受けると、その不動産には抵当権が設定されます。
抵当権の一種に「根抵当権」というものがありますが、住宅ローンを組む時の抵当権とは特徴が異なるため、根抵当権つきの不動産を売却するときは注意が必要です。
そこで今回は、根抵当権の特徴や不動産を売却するための手続きの流れ、事前に知っておくと良い注意点について解説します。
根抵当権つきの不動産の売却をご検討中の方は、ぜひ参考にしてみてください。
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冒頭でもお伝えしたように、根抵当権とは、金融機関から融資を受けるときに、金融機関が不動産に対して設定する抵当権の一種です。
まずは、「そもそも抵当権とはなにか」といった基礎知識から確認しておきましょう。
抵当権とは、住宅ローンを利用して不動産を購入する場合、金融機関が対象の不動産に設定するいわば担保のことで、登記簿にも記録されます。
返済が滞った場合には、金融機関がその不動産を差し押さえ、競売によって強制的に売却して債権を回収します。
抵当権は、住宅ローンを完済すれば抹消しますが、登記簿上の記載は自動的に消えないため、抵当権抹消登記が必要です。
根抵当権とは、不動産に対してあらかじめ極度額(融資の限度額)を設定し、その範囲で不特定の債権を担保する権利のことです。
債権を特定しないため、極度額内であれば借り入れと返済を繰り返すことができ、借り入れのたびに登記をする必要がありません。
最初に融資を受ける際に根抵当権の設定登記をおこなえば、極度額内で将来債権が発生しても、登記にかかる手間や手数料が発生しないのです。
たとえば、限度額を1億円とした場合、設備に5,000万円、材料に3,000万円と合計8,000万円の融資を受け、必要なときに残りの2,000万円を借り入れるといった使い方ができます。
そして、根抵当権は、借り入れたお金を全額返済しても消えません。
資金が必要なときにスムーズに融資を受けられるという特徴から、根抵当権は主に事業用資金の借り入れの際に設定されます。
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抵当権、根抵当権のいずれも、金融機関の担保権が設定されている状態の不動産は売却できません。
いずれも、残債を完済したうえで権利を抹消する必要があります。
そこで次に、根抵当権つきの不動産を売却する際の手続きの流れについて解説します。
それぞれの権利がついた不動産の売却方法を確認しながら、抵当権との違いについても理解を深めましょう。
抵当権は、購入する不動産を担保にして住宅ローンを組むときに設定されます。
債権を特定した抵当権であるため、借り入れたお金を返済すれば、不動産に設定された債権も消滅します。
住宅ローンの残債が残っている場合、売却代金で残債務を完済できる「アンダーローン」であれば、問題なく不動産を売却して抵当権を抹消することが可能です。
売却代金を返済に充てても債務が残る「オーバーローン」の場合は、不足分を自己資金から返済する、もしくは金融機関の同意を得たうえで任意売却という方法で売却することが可能です。
先述のとおり、根抵当権は、抵当権のように残債を完済すれば抹消できるものではありません。
したがって、根抵当権つきの不動産を売却するためには、以下のような流れで手続きをおこなう必要があります。
残債務と査定価格を確認する
まず、不動産の売却代金で残債務を返済できるのかを確認する必要があります。
不動産会社に査定を依頼し、借入金の残高と照らし合わせてみましょう。
残債務より査定価格のほうが高い場合は、通常の不動産売却をおこなうための交渉をします。
残債務より査定価格のほうが低い場合は、任意売却の同意を得るための交渉が必要です。
債権者と交渉し根抵当権抹消の同意を得る
根抵当権の抹消については、金融機関がすんなり同意しない可能性があります。
なぜなら、根抵当権をそのままにしておけば、将来新たな借り入れが生じる可能性があり、それが金融機関の利益に繋がるためです。
しかし、根抵当権を抹消しないと不動産を売却できないため、同意を得るために根気よく交渉しましょう。
元本を確定する
根抵当権抹消に関して金融機関の同意を得られたら、元本確定をおこないます。
元本確定とは、借り入れと返済をストップし、現時点で債務がどれだけあるのかを確定させることです。
元本が確定すると、根抵当権は住宅ローンを組むときの抵当権と同様の扱いとなります。
したがって、それ以降新たな借り入れはできなくなります。
不動産を売却する
元本を確定したら、不動産を売却して売却代金で残債を完済し、根抵当権抹消登記をおこないます。
根抵当権抹消登記は、自分でおこなうこともできますが、司法書士に依頼するのが一般的です。
なお、オーバーローンで任意売却をおこなった場合は、残った債務を分割で返済していくことになります。
このように、根抵当権つきの不動産を売却するためには、金融機関の同意を得たうえで元本を確定すれば、売却が可能になります。
通常の抵当権より複雑な担保権であるため、流れを理解したうえで手続きを進めることが大切です。
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根抵当権は、元本を確定したあと通常の抵当権となり、不動産を売却できるようになることを前章で解説しましたが、不動産を売却するにあたって気を付けなければならないことがあります。
そこで最後に、根抵当権つきの不動産を売却する際に知っておきたい注意点について解説します。
通常の抵当権は、債権を特定しているため、不動産を売却して所有権が移ると、抵当権も一緒に移ります。
なぜなら、抵当権は不動産に対する債権を回収するために存在する担保権だからです。
しかし、根抵当権には随伴性がありません。
随伴性とは、所有権の移転とともに担保権が移動することです。
つまり、根抵当権つきの不動産を買主に譲渡しても、根抵当権は元の所有者にとどまるということです。
この性質から、根抵当権つきの不動産の所有者と、借り入れをおこなった債務者とが異なるケースが生じます。
そうなると、不動産の所有者が知らないうちに債務者が新たな借り入れをおこない、不動産を担保とした借金が増えているということも起こり得るのです。
このようなケースが生じると、場合によっては不動産を差し押さえられるといったトラブルになる恐れがあるため注意が必要です。
先述したように、根抵当権は元本を確定すると、通常の抵当権と同様の扱いになります。
つまり、繰り返し融資を受けられるという根抵当権の性質が消滅します。
たとえば、親が亡くなり事業を受け継いだ場合、将来新たな融資を受けたいと思った際に、根抵当権を利用して借り入れることができなくなるのです。
一度元本を確定すると元に戻すことができず、事業資金を借り入れたい場合は、金融機関の審査を受けて新たに根抵当権を設定する手続きをおこなわなければなりません。
したがって、事業資金として将来融資を受ける可能性がある方は、注意が必要です。
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不動産に根抵当権がついている場合、極度額の範囲内であれば、繰り返し資金を借り入れることができます。
将来新たな債務が生じる可能性がない場合は、元本を確定することで、根抵当権つきの不動産を売却することが可能です。
ただし、元本確定後は根抵当権に戻せないため、事業資金を借り入れる可能性がある場合は慎重に判断することが大切です。
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